第275話一週間後には寒くなりました

 秋になって気温がグッと下がってきた。


 そろそろ寒さ対策をしないと風邪を引いてしまいそうだ。


 僕は家に帰って扇風機から片付けようと思っていた。


 そんなとき、君から電話が入る。


 炬燵を出したいから、手伝ってほしいというのだ。


「あ、きたきた。こっちー」


 君の家に行くと、玄関の向こうから手を振っているのが見えた。


 短いスカートを穿いているが、モコモコの靴下着用の上に、オーバーサイズのパーカーを羽織っている。


 そんな君を見ると、やっぱり寒いのかなと想像した。


 廊下の突き当りにある押入れから、炬燵のセットを取り出そうとしているようで、僕は靴を脱いで助っ人に向かった。


 四脚の土台と天板を分けて収納しているようで、特に天板が重くて取り出せないらしい。


 僕と君は「せ~の」で息を合わせて天板から取り出すことにした。

 

 思っていたより重くて、廊下を引きずるようにして天板を取り出す。


 そのあとに土台を出して、二人掛かりで君の部屋まで運んだ。


 組み立てるのは簡単だったので、コンセントを入れて早速スイッチをONにする。


 君はもぞもぞと炬燵に入り、幸せそうに身体を丸めていた。


「はぁ~、これで寒さもへっちゃらだよ」


 しばらく雑談をしたあと、君にお礼を言われて僕は部屋をあとにした。


 ――しかし、その翌日。


 きまぐれな気象の変化で、奇跡的な真夏日が数日続くとニュースで報じられた。


 学校では半袖の生徒が目立ち、君は死んだような目で僕を見つめてくる。

 

 暗に「炬燵を片付けるのを手伝ってほしい」と訴えているが、風邪を引いたことにして、申し出を拒否しようと思っている。

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