第268話色々あったけど、これが夏休みにもらった珍しい鉱石です

 西暦26××年。


 火星生まれのわたしは、夏休みの自由研究のために一人宇宙に飛び出した。


 珍しい鉱石でも見つかれば持って帰ろうと、そんな軽い気持ちでいた。


 ――が、宇宙船がトラブルに遭いエンジンが止まってしまう。


 幸い食料と酸素はしばらく持ちそうだけど、ずっと宇宙を漂流するわけにもいかない。


 救難信号を出したまま、わたしは一人ぼっちの宇宙生活を送ることになった。


《ドンドン……》


 そんなある日、壁を伝って音が聴こえる。


 宇宙デブリでも衝突したのかと思ったけど、音は一定のリズムを刻んでいた。


 操縦室で船内映像を映すと、見たこともない生物がカメラに映り込む。


 そして宇宙船の外に、いつの間にか機械の塊がドッキングしていた。


 これってひょっとして宇宙人の宇宙船?


 見たこともない形だ。


「どうしよう……」


 反射的な感覚で恐怖を覚える。


 宇宙人と遭遇したことなんてない。


 食べられちゃうのかな?


 もう夏休みの宿題とかどうでもよくなってきた。


 わたしは隠れる場所を探そうとするが、そうこうしているうちに扉が開き、例の宇宙人が中に入ってくる。


 もうダメだ……!


「●~¥#?」


 宇宙人が何か言った。


 だけど言葉がわからない。


 さらに宇宙人はモコモコの身体を脱ぎ捨てると、中からわたしたちと同じ人間の姿が露わになった。


 服装も火星の男の子とそっくり。


 もしかして、これが教科書で習った地球人なのかな?


 それからわたしは救助され、無事に火星に帰ることができた。


 地球人のあなたは、帰り際にきれいな蒼い石をプレゼントしてくれる。


 わたしは石を光に翳して空を見た。


 来年は地球について調べようかな。


 そんなことを思う。

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