第267話翌日から、なぜか先輩のところに行けず、モヤモヤしている

 絶対に見られてはいけないノートが紛失してしまった。


 これを探し出さないといけないのだが、どこにあるかはわかっている。


 図書室だ。


 しかしなぜか探しても見つからない。


 もっと詳しく調べたいが、怪しまれるのは避けたい。


 そこで僕は図書委員になってノートを捜索することにした。


「めずらしいね。なんで図書委員になったの?」


 メガネの位置を直しながら、柔和な笑みで君は語りかけてきた。


 君も図書委員だ。


 そんな君にも、理由までは話さない。


 何せノートの中身は絶対に秘密だからだ。


 中身がバレたら僕はおしまいだ。


「な、なんとなく本が好きで……」


 そんな言葉で誤魔化して、この日は会話をスルーする。


 ノート探しを始めるが、しかし見つかる気配がない。


 そんな感じで数日が経過する。


 それでもやはり、ノートは一向に見つからなかった。


 ――――


 …………

 

 なにかおかしい。


 人に持っていかれないような場所に隠したハズなのに。


 ひょっとしたら誰かに取られたのか?


「あなたが探しているのはこれ?」


 そんなとき。


 背中越しに君の声がした。


 手にはノートを持っている。


 しまった、どうやら悪い予想は当たったらしい。


 僕が先輩に対する想いを綴ったノート。


 それが君にバレてしまった。


「おかしいと思ったんだ。あなたは本に興味なんてないし」


 そう言って君はノートを僕に返す。


 その表情から、中身を見たということが推測できた。


「わたしに興味はないんだ」


 そしてこちらを見つめ、


「わたしは興味あるんだけど」


 静かに僕を見つめる。


 戸惑いはしたものの、しかし答えは決まっていた。


 僕は無言で首を横に振る。


 すると「そう」と言って、君はメガネの位置を直してこの場を去った。


 視線を落とすとノートには栞が挟まれており、そこには【がんばれ】の一言がある。


 僕は黙して、君の背中を見つめていた――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る