第265話人間観察
表の顔は「演劇部」。裏の顔は「なんでも屋」。
それが僕という人間だ。
高校二年の夏。
ヒマな演劇部を訪れる一人の少女がいた。
「なんでも屋」の僕に、依頼をしに来たらしい。
そういえば君の顔は見たことがある。
確かちょっとした有名人だよね?
「実は二股がバレちゃって……」
周囲の目を気にしながら、君は小声でそんなことを言ってきた。
そうか思い出した。
君は男女関係のトラブルメーカーだ。
一年の真面目な男子と付き合っていたハズだが、もともとお金目当てという噂があった。
どうやらそれは本当らしく、サイフの紐が固いとわかった途端に別の男子に乗り換えたようだ。
一年の子は相当ショックを受けているようだが、君は穏便に別れたいのだという。
その手助けをするのが、今回の僕の仕事だ。
ひとまず報酬は後日持ってくるらしく、この日は依頼だけ聞いて別れたのだった。
――ところが君は報酬など払うつもりはない。
はじめから踏み倒すつもりで依頼したことを、「新しくできた彼氏」のもとで愉快に暴露していた。
君にとって男子はATM。
そのことを知った僕は、タイミングを見て自分の正体を現す。
そう、「君がつきあっている新しくできた彼氏」というのが、実は僕だ。
数日前、一年生の彼氏さんから君のことを探ってほしいと調査を依頼されていたので、こうしてニセ彼氏に変装してずっと情報を集めていた。
演劇のスキルは、こういうとき役に立つ。
この日から数日後、真実を知った一年の子と君は正式に別れた。
君はお金を手に入れるために、自分を演じ続けてきたのだろうか。
あるいは元から素の自分を貫いてきたのだろうか。
本当の姿なんて、考えてもわからない。
僕は君の人間性に、演劇部としての興味が湧いたりも、する――。
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