第264話ノンセンス・ナンセンス

 わたしの寝言はひどい。


 それこそ会話するレベルで発しているそうだ。


 自分は寝ているからわからないけど、周りが言うんだから本当だろう。


 会話するレベルの寝言なら、寝たまま授業を受けても先生にはバレないかも。


 そんなことを考えていたら本当に眠たくなってきた。


 でも、数学の先生はコワイし……寝るのは危険すぎる。


 そんな恐怖と闘いながらも、瞼はどんどん重くなる。


 そしてついに、わたしは睡魔に負けてしまった……。


 ところが目が覚めたとき、思わぬ展開が待っていた。


 苦手科目にも拘わらず、わたしは先生からの質問に全部答えていたのだという。


 奇妙なのはこれだけじゃない。


 この後に受けた国語も体育も、全部寝たまま受け答えをしていたというのだ。


 どうやらわたしは寝言で世渡りをする術を身に付けたらしい。


 フフフ……。


 その日からわたしは、寝たまま学校に行くのが日常になった。


 そんなある日、わたしは一人の男子生徒から唐突に告白される。


 返事は少し待ってもらったけど、実は少し気になっていた相手だ。


 あとは返事を受け入れるだけなのだが、勇気がない。


 どうするべきか悩んでいると、途端に眠気が襲ってくる。


 きっとこのまま目を閉じれば、寝言が全てを解決してくれるだろう。


 勇気なんか出さなくても、想いを伝えることができる。


 簡単じゃないか。


 ――でも、


「お、おねがいします……!」


 わたしは自分の口で、そう伝えた。


 眠気に耐えるわたしを見て、あなたは少し心配していた。


 大丈夫だよ。


 だってこんな大切なこと、寝言で言えるわけないもんね。

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