第262話わたしはずっとほったらかす

 何かに使うと思いながら買ったものが、ずっと使われないで「ほったらかし」になっていることがある。


 100円均一のアルバム。


 キャラクターがプリントされた絆創膏。


 かわいい花柄の手紙。


 どれも机の上に放置してある。


 こんなことしてるのはわたしだけだろうか?


 ふと気になったので学校で聞いてみた。


「使うから買うんだろ? 使わないなら、いらないんじゃない?」


 そう答えたのはあなただ。


 陸上部のあなたは今日も朝練に励んでいる。


 その合間を縫って聞いてみた。


 使うから買う……ということはわたしはムダな買い物をしてしまったのだろうか?


「そもそもなんで買ったんだ?」


 あなたにそう聞かれて、わたしは答えに窮する。


 なんで買ったと言われると、ここで答えるわけにもいかない。


「そ、参考になったわ」


 そう言ってわたしはこの場を去った。


 この日の放課後、わたしは考える。


 買ったきりで放置されたものは、すべてあなたに関係していた。


 クラスで撮影した学園祭の写真は、アルバムに入れようと思ってた。


 あなたが足を怪我したときは、さりげなく絆創膏を差し出そうと思ってた。


 高校生になった今でも変わらなかったあなたへの想いを、手紙に記そうと思ってた。


【使わないなら、いらないんじゃない?】


 そう言ったあなたの言葉がよみがえる。


 彼女がいるあなたには今後、一生使わないかもしれない。


 だけどやっぱり捨てることができないのは、あなたに対する気持ちをほったらかしにできないからだと思う。

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