第261話殺伐プレフィックス

「ぶっとばす」とか「ぶったまげる」とか、言葉には印象的な接頭辞が存在する。


 僕は16年の人生の中で、とりわけ意識してこれらの言葉を使ったことはないが、この間、意識せざるを得ない出来事が起こった。

 

 クラスの女子から、こんな言葉を投げかけられた。


「ぶっコロス」


 シンプルに穏やかじゃない。


 面と向かって言われた瞬間に、それこそ「ぶったまげ」そうになった。


 真っ青になるほど君の顔はコワイ。


 なんでそんなにキレてるの?


 理由もわからないまま、君は素手を握り込み、ドストレートの正拳を真っ向からブッこんできた。


「わわっ……!」


 間一髪で攻撃をかわし、僕は廊下を走って行く。


 異常事態の非常事態。


 後ろから追いかけて来る君の姿に、僕は無条件に「ごめんなさーい!」と叫ぶばかりだ。


 なにも悪いことはしてないけど、身体が反応してしまう。


 全速力で走ったものだから、僕はうっかり転倒してしまった。


 君は僕を追い詰め、荒々しく息を吐く。


「もう終わりだ……!」


 そう思って目を瞑った瞬間、ハッとなって目が覚めた。


 気が付けば国語の授業の真っ最中。


 先生がわざとらしく咳払いをして、黒板をチョークでコンコンと叩いた。


 恥ずかしい……。


 みんなから注目される中、僕は顔を真っ赤にし、穴があったら入りたいと顔を伏せる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る