第260話ガクガク哲学

 わたしとは何なのか?


 自分自身に問いかけてみる。


 わたしは誰で、何のためにここにいるのだろう?


 わたしは自分のことをわたしと思っているが、実はそうじゃないかもしれない。


 わたしの認識する世界は別物で、実は他者にだけ本物の世界が見えているのかもしれない。


 わたしの知らないところで、世界は展開していく。


 それでは、置き去りにされたわたしの存在意義とは?


 何のために生まれてきて、何のためにここにいるのか?


 この真相を確かめるべく、わたしは同じクラスのあなたに聞いてみた。


「はぁ? なに言ってんの?」


 なに言ってんのじゃねーよ。


 この、このっ。


 わたしが哲学キックをお見舞いしたら、あなたも少しは聞く気になったようだ。


 まったくこれだから男子は。


 よし、もう一度聞こう。


 わたしは何のために生まれて、何のためにここに――


「そんなことより、この間の返事まだ?」


 わたしはドキッとする。


 この間、あなたに告白されたばかりだったからだ。


 わたしの哲学によれば、告白という概念は脳内の一時的なバグにより――というか科学的知見から見て、これはつまり、男女間の、その……


「おれ、本気だから」


 ――あなたは真剣な表情で言う。


 ち、近い!

 

 そんなに迫られても、わたしは告白とか初めてだしっ……!

 

 どうしたらいいか考える。

 

 困った……。


 胸のあたりがドキドキするが、この気持ちを哲学的になんて表現したらいいのかわからない。

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