第256話久しぶりに、描いてみる
わたしはデザイン系専門学校に通う学生だ。
一人暮らしをしているのだが、最近ツッコみたくなる出来事が立て続けに起こっている。
例えば窓を開けていたらサイフをネコに盗まれた。
例えば夜中に黒いパーカーを着てコンビニに行ったら、不審者がうろついていると近隣住民から通報された。
例えば深夜のコンビニにすっぴんで行ったら、「化粧してないほうがぜったいきれいッスよ」と店員にアドバイスされた。
終いにはペンネームで活動しているイラスト投稿サイトで、なぜか本名がバレてしまった。
どういうこと!?
ちなみにバレたとはいっても、一人の人物にだけだ。
それは高校のときに同級生だった男子生徒だ。
「このイラスト最高です!」とベタ褒めされたのを覚えている。
ちなみに彼の名前を聞いても覚えてなかったので、ひとまず「あなた」と呼ばせてもらうね。
しかし会話もしたことないのに、どうしてわたしの正体に気付いたの?
わたしは押入れの卒業アルバムを引っ張り出して、ページを開く。
するとあなたの写真を見つけた。
当時は美術部だったらしい。
一方、わたしはマンガ研究部に所属していた。
あなたはわたしのマンガを見たことがあるらしい。
だからネットで見かけたイラストに見覚えがあったのだ。
それにしてもよく見つけたね……どんだけ低確率だよ。
「こ、これからも応援してます!」
最後にそんなメールをもらった。
ツッコみだらけの人生に、ちょっとしたサプライズだ。
わたしは机のノートを取り出して、久しぶりにマンガを描いてみる。
せっかくだから専門学校を題材にしてみるか、なんて考えながら。
気付いたら主人公がネコにサイフを取られるところから描き始めていた――。
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