第253話プライスレスマイル

 レジ袋が有料になってしばらく経つ。


 スーパーではエコバッグを持参する人たちが目立ち、持っていなければサイズに応じた金額で袋を購入することもできる。


 僕はバッグを持っていないので、レジ袋を購入することが多かった。


 そのことを学校で話すと、女子手芸部の君が食いついた。

 

「あなたにはこれあげる」と言ってマイ・エコバッグをくれる。


 買い物するときは必ず持参しているらしく、君はバッグの素晴らしさについて熱く語った。


 そこまでいうなら断るのも気が引ける。


 僕はこの日からエコバッグを使ってみることにした。


 そしたらこれが便利だった。


 レジ袋より頑丈だから、ある程度重い物を入れても袋が破けることはない。


 料金を払う必要もないので、僕はエコバッグを使っての買い物が当たり前になった。


 それからしばらく経ったある日、僕は誕生日を迎えた。


 ケーキやお菓子を買って一人で祝うのが毎年のパターンだ。


 だから僕はスーパーに出掛けたのだが、そこで偶然君と出会う。


 どうやらエコバッグを持っていないみたい。


 なんでだろう。


 忘れたのかと聞いてみると、実はもとからエコバッグを持っていないと言う。


 あれだけ熱弁したのに?


 実は僕に渡したものは、本来、誕生日に渡す予定だった手作りTシャツだという。


 制作過程でエコバッグに化けたらしいのだが、Tシャツを作るという手芸部の発想がすごい。


 というか、そんな贈り物を考えてくれたことに照れてしまう……。


 とりあえずレジで会計を済ませたあと、君の分もエコバッグに入れた。


 その帰り道。


 僕は「ケーキ食べる?」と聞いてみる。


「それ有料?」と冗談っぽく言いながら、君は無償の笑顔を僕に振り撒いた。

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