第251話最近見る変な夢の正体

 最近変な夢を見る。


 そのせいで僕は寝つきが悪い。


 疲れは取れないし、頭はぼんやりしたままだ。


 寝ぼけた状態で学校に行く毎日を送る。


 こんな状態じゃあ授業もまともに受けれない。


 フラグ回収とばかりにさっそく眠気が襲ってくる。


 まだ一時間目の授業なのに居眠りだ。


 夢の世界に落ちていく。


 それはいつもの夢だった。


 ここは学校。


 制服を着た女の子が僕に話し掛ける。


「ねぇ、今度の日曜どこに行く?」


 僕たちは仲のいい友達のようだった。


 君はいつも明るい笑顔で元気をくれる。


 何気ない雑談をしたり。


 一緒に昼休みを過ごしたり。


 話し声や日射しの温かさなど、やけにリアルな夢だった。


 そんな楽しい時間は突然プツリと消える。


 夢が覚めて現実世界に戻った瞬間だ。


 目を開けた僕の前に、眉間にシワを寄せる先生の姿があった……。


 こんなふうに授業で寝ることは多い。


 ひどいときは体育の時間だって寝てしまう。


 リアルな夢は体力を消耗するのかもしれない。


 だったらどうでもいい夢を見るほうがマシなのかも。


 そうは思っていても、やはり夢の続きを見てしまった。


 日曜に遊園地に出掛けた僕は、君とささいなことでケンカをしてしまう。


 君が涙を流したところで目が覚めるという後味の悪さ。


 でも、現実でなくてよかった……。


 ――さて、これから学校だ。


 気を取り直して出掛けないと。


 ところが寝ぼけていたせいで、僕は道路に飛び出した。

 

 迫るトラック。


 弾け飛ぶ身体。


 僕は死んだ。


 もう起きない。


 ――と思っていたが様子が変だ。

 

 目を開けると、となりに君がいた。

 

 ああ、そうか。

 

 トラックに轢かれたのが夢で、君とケンカしたのが現実だったんだ。


 僕は思う。


 夢でよかった、と。


 ケンカするのは辛いけど、謝れなくなるのはもっと辛い。


 そうなる前に覚めてくれて、ほんとによかったと胸を撫で下ろす。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る