第250話一番の健康法

 わたしは不健康な少女だ。


 運動キライ。

 

 野菜キライ。

 

 甘いものスキ。


 とにかく何もしないでだらっと過ごしていたい。


 体型が太ってないのが不思議なくらいだが、健康とはいえないだろう。


 高校生でこのライフスタイル。


 将来はどんな大人になるのかな。


「なぁ、顔色悪いぞ?」


 昼休みのことだ。


 机に伏しているところに、誰かが声を掛けてくる。


 男子水泳部のあなただ。


 最近わたしの顔色は悪いのだという。


 え、そんなにヤバかったの?


 あなたはわたしのために運動を勧めてきた。


 よけいなお節介でしかないのだが、スポーツ青年の圧に負けてわたしはとある場所に向かう。

 

 そこは屋内プールだった。


 わたしの身体を健康な状態に戻してみせるとあなたはいう。


「ほら、もっとゆっくり動かして!」


 わたしの手を引きながら、あなたはバタ足のやり方を仕込んできた。


 小学生かよ。


 水泳の大会はしばらくないそうなので、こうしてコーチに徹することができるらしい。

 

 地獄だ……。


 あなたはその日から食事のことまで口出ししてきた。


 やはりスポーツ青年の圧に負けて、わたしは肉だけでなく野菜も食べるようになる。


 そんな日が一カ月続くと、身体に変化が訪れた。

 

 なんか動きが軽い。


 よく寝れる。


 肌がきれい。


 あなたは見事にわたしを変えてみせた。


 健康になったのだ。


 今でも時間があるときは、水泳を教えてもらっている。


 でも一つ疑問がある。


 どうしても息苦しくなるときがあるからだ。


 無理をしたせいか、もしくは病気なのだろうか?


 バタ足の練習で手を引いてくれるたび、わたしは呼吸が難しくなる。


 心配になって病院に行ったら、なぜか看護婦さんたちが微笑ましくこちらを見ていた。

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