第247話おはなしとかげ
高校二年生の夏。
僕は好きな人に告白することを決意する。
相手は同級生の君だ。
まともに話しかけたこともないけど、穏やかな雰囲気に惹かれていた。
窓際で本を読んでいる姿が、今でも印象に残っている。
僕はストレートに想いを伝えようと思っていたけれど、「まぁ、落ち着け」と引き留める人物が現れた。
僕の影だった。
まともに話したことのない相手にいきなり告白したら「惹かれる」どころか「引かれる」と冷静な分析をしてくる。
というか、影が喋っている時点で冷静さを失いそうだ。
とにかく距離を縮めるために作戦を立ててくれるそうで、僕は自分の影と計画を練ることになった。
それから僕たちは動画でトークスキルを勉強したり、学校ではさり気なく君に話し掛ける努力をした。
自分のことを知ってもらうために、趣味の話題なども盛り込んだりする。
不器用ながらも少しずつ君は自分から話し掛けてくれるようになった。
ちょっと距離が縮まったようで嬉しい。
だけど本番はこれからだ。
数カ月の月日が流れたある日。
僕は学校の屋上に君を呼び出した。
夕日の照らす放課後とかベタすぎて恥ずかしい。
言葉を噛みながらも、僕はなんとか君に想いを伝えることができた。
すると君は頭を下げて「ごめんなさい」と言った。
僕はショックを受ける。
寂しくこの場を去ろうとしたとき、夕日に伸びた君の影がやってきて、
「あなたのことをまだ知らない」
そう言った。
遠回しだが……、
それはもっとお話しがしたい、そして互いをよく知りたいという気持ちの表れだった――。
そして次の日。
お互いの気持ちがわかったせいか、会話をしようとするとなんだかぎこちない。
でも、お互いの影はやけに饒舌に話すものだから、僕たちはなんだか嫉妬する。
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