第245話次世代勇者は魔王のいない世界で聖剣を抜く

 僕の職業は勇者だ。


 長きにわたりこの世界を守ってきたが、このたび引退することになりました。


 この場を借りてご報告とさせていただきます。


 周りからは「え~まだ早いよ~」と引退を惜しまれた。


 でもデビューが5歳の頃だったからね。


 この業界も長いんだ。


 今16歳だし。


 もう10年以上やってる。


 ちなみに僕、5歳で聖剣抜いたからね。


 最年少ね。


 未だにこの記録は抜かれてないね。


 フフ。


 さて、引退したら何しよう。


 今までモンスターばかり相手にしてきたからな。


 なんというか、のんびりと生きてみたいね。


 年齢のことを考えると学校とか行きたいな。


 魔王の城から持ってきた宝石がいっぱいあるし、学費には困らないし。

 

 よし、これでいこう。


 こうして勇者を引退した僕は、手頃な学校に入学手続きをする。


 そこでは学問の他に剣の扱い方や魔法の実技などを習った。


 しばらくしたら友達もできたし、なんというか――楽しい。


 これが青春か。


 しかし、楽しかったのも最初だけだった。

 

 授業に飽きてしまったのだ。


 元・勇者だけに能力値が高すぎた。


 途端に締まりがなくなった僕は途方に暮れる。


 と、そんな時。


 僕の前に4歳で聖剣を抜いたヤツが現れた。

 

 しかも女の子。


 僕は思わず「君は何者だ!?」と尋ねていた。


 すると君は


「聖剣にきょうみはないわ! もっとじゆうにせかいを旅するの!」


 と言ってどこかに行ってしまった。


 僕は衝撃を受ける。


 なにも魔王を倒すだけが全てではない。


 平和になった今だからこそ、もっと自由に生きることだってできるはずだ。


 そうすればきっと、未だかつて触れたことのない未来が待っているかもしれない。


「僕も行ってみるか――」


 聖剣を置き去りにして、魔王のいない世界ではじまる僕の二周目ライフ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る