第242話そばにいるだけで――

 わたしは生徒会に所属している。


 会長のあなたをサポートするのがわたしの役目だ。


 ……が、どうもこういった仕事は向いていない。


 生徒会は端的に言って地味な仕事が多いからだ。


 例えば大量に送られてくる生徒からの意見書に一枚ずつ目を通したり。


 各部活の内情を調べて配付される予算を決定したり。


 地域と協力して町内をきれいにしたり。


 根気を必要とするこれらの仕事は、長続きしないわたしには向いていなかった。

 

 なのになぜわたしは生徒会にいるのか?


 それは会長のあなたが気になっていたからだ。


 クールなメガネとポーカーフェイス。


 どんな仕事もそつなくこなす姿に、いつしかわたしは憧れていた。


 わたしもあんなふうになりたい。


 ……が、現実はどうだ。


 意見書も文字を読めば、すぐ眠たくなるし。


 部活の内情を調べようとすれば、雑談に花が咲く。


 町内をきれいにする前にロッカーが汚いと先生に怒られ。


 とにかくわたしはポンコツだった。


「会長、わたし……辞めます」


 ある日、そんなことを口にする。


 いきなり辞めると言い出したせいか、あなたは珍しく驚いたような表情を浮かべた。


「つまり、長く続けることが苦手だと?」


 書類に目を通しながら、あなたはそんなことを聞いてくる。


 わたしは静かに一回頷くと「そうか」と一言だけ返して「寂しくなるが仕方ない」と言った。


 そしてあなたは、最後の仕事だけ片付けてから辞めてもらえるか? と告げる。


 わたしは翌日からその仕事に着手するのだが、ただ、あなたの側に座ってたまに話し相手をするだけだった。


「これ、なんの仕事?」


 と聞くと、


「植物には水が必要なんだ」


 と意味不明なことを言われるばかり。


 植物? 水?


 つまりわたしがいないと枯れちゃうってこと?


 ぼんやりとそんなことを考えながら、とりあえず今日もあなたのそばで話をしている。

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