第239話俺、この仕事が終わったら娘の誕生日に――

 ある日、学校が悪の組織に占拠された。


 真っ黒なラバースーツを着た戦闘員たちが、クラスのみんなを次々と攫い体育館に閉じ込める。


 全校生徒が隔離されるまでに、そう時間は掛からなかった。


 その中にはもちろん君もいる。


 僕の好きな女の子だ。


「なんとか助けないと……ッ!」


 歯噛みしながら焦る気持ちを落ち着ける。


 幸い僕はトイレにいたおかげで捕まることはなかった。


 なんとかして僕は体育館の内部に潜入する。


 そこで戦闘員の親玉を発見した。


 見ると傍らに君を含む人質を発見。


 僕は助けるチャンスを窺った。


 と、そこで。


 親玉は身代金を要求する前に、あるところに電話をかける。

 

 それは自分の家族に向けての電話だった。


 会話を聞くことでいろんな情報が明らかになる。


 どうやら彼には小さな娘がいた。


 しかも誕生日が近いらしい。


 だが、この親玉は仕事でミスばかりしているらしく、この占拠によって多額の身代金をせしめることができなければ、組織をクビになるのだという。


 最悪、娘の誕生日は祝えないかもしれない。


 僕は話を聞いたあと、みんなの前に姿を現わして口を開く。


「そこまでだッ!」


 光に包まれた僕は自分の正体を明かす。


 それは悪を滅ぼすヒーロー。


 光の速さで僕は悪の親玉にトドメの一撃を喰らわせた――。


 一カ月後。


 とあるイベント会場に小さな女の子と、その母親がやってくる。


 今から開催されるのはちびっこ向けのヒーローショーだ。


 女の子は自分の誕生日にショーが見れてわくわくしている。


 そして舞台に現れたヒーローと悪の親玉。


 ヒーローの攻撃を見事受け身で魅せる親玉は、なかなかの役者っぷり。


 前職で培った受け身技術を披露して、会場からは大きな拍手をもらっていた。


 元・悪の組織は、今では子供のヒーローになっていた。


 そして本物のヒーロー活動がない日の僕は、こうしてショーのバイトをしていたりする。


 同じクラスの君が来ていないか会場をチラ見しながら。


 ステージの上で悪の親玉と対峙する。

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