第237話嘘から出たなんとか

 学校が何者かによって占拠された。


 逃げ遅れた僕は更衣室のロッカーに隠れ、武装した男たちの会話を盗み聞く。


 どうやら先生や生徒は全員外に出たらしく、残っている生徒は僕だけのようだ。


 ただ、会話の続きを聞いた僕は思わず声を上げそうになった。


 文芸部の部室に君が取り残されているというのだ。


 君は唯一の女子部員で、父親は有名企業の社長をしている。


 おそらく君を残した犯人の目的は身代金だと推測できた。


 とにかく危険を冒すのはゴメンだ。


 ちなみに僕も文芸部なのだが、校内からの脱出を試みる際にあることを思い出す。


 部室に大事な原稿を置いてきてしまった。


 あれはとある賞に応募するものだから、今日持って帰らないと輸送に間に合わない。


 ある意味、命の結晶とも呼べる作品を取り戻すため、僕は部室へ潜入することを決意した。


 部室までの道中は気が気でなかった。


 何せ武装した犯人がうろついているのだから。


 いつ死んでもおかしくない状況に「何やってんだろ」と自問自答を繰り返す。


 が、意外なことに犯人の隙をついて部室まで辿り着くことができた。


 このまま一気に原稿を取り返そう!


 僕は思いっきりドアを潜った。


「そこまでよ」


 僕の後ろから銃を突きつける君がいた。


 バンと引き金を引いた瞬間、血のりが出て僕は茫然とする。


 実はこれまでの事件は嘘だった。


 犯人は君が財力によって雇った役者だった。


 臨場感のある作品を書くために、このようなバカげた騒ぎを起こしたというが、もう呆れるしかない。


 ――そして放課後。


 君は郵便局に行く僕についてきた。


 すると後ろから銃を突きつける男が一人。


 もう冗談はやめろと言うのだが、君は「この人誰?」と首を傾げるのだった。

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