第233話ファイナル・めかぶ・ランド

 ここは剣と魔法の国マジックランド。


 魔法学校に通う僕は、ある日、教室で目が覚めると「めかぶ」になっていた。


 しかも丁寧に透明のパッケージに入ったヤツだ。


 どうなってんだ……。


 そこへやってきたのは魔法使い見習いの君だ。


 学習の道具を取りに来たのか、机の上で「めかぶ」の僕を見つけてハッとした表情を浮かべる。


 言葉が喋れる僕は、「この姿を魔法で戻して!」と叫んだ。


 しかし君は自信がなさそうに首を振る。


 見習い魔法使いには、変身を解くのは難しいようだ。


 そんなやり取りをしてる中、世間では魔王を倒すために勇者や賢者が最果ての城を目指していた。


 なんでも魔王を倒せば名声と強力な魔力が手に入るのだとか。


 学校からも何人か向かった生徒がいるが、それを聞いた僕は名案を思いつく。


 魔王を倒せば僕を戻す方法が見つかるんじゃないか?


 魔王が高度な魔法を扱うなら、変身を解くこともできるかもしれない。


 君だって魔王を倒せば有名人になれるかもしれないし。


 そんな誘い文句に乗った君は、僕を連れて最果ての城へ旅に出た。


 ――ところがその翌日。


 いきなり僕たちは雪山で遭難する。


 洞窟で吹雪を凌ぐが、君の体力は限界だ。


 生き延びる方法は一つしかない。


 冷凍めかぶになる前に、「僕を食べろ」と伝える。


 少ないカロリーだけど生きながらえるかもしれない。


 しばらく逡巡したのち、君は蓋を開けた。


 ――と、そこで僕は元の姿に戻った。


 同時に失っていた記憶も取り戻し、僕はめかぶになった経緯を思い出す。


 わけあって、自らに変身の魔法をかけたんだった。


 一回、平凡な学園生活がしたくて学校に潜入したはいいが、人に会うのが気まずくてとっさにめかぶになっのが失敗だった。


 とにかくもとの姿に戻れたので一安心。


 もう魔王の城とかどうでもいいので、僕たちは帰ることにする。


 平和が一番だし、復活した僕の魔力でこの雪山から脱出することに成功した。

 

 ――その翌日。


 街ではこんなウワサであふれていた。


 最果ての城に向かった勇者たちの証言だと、そこに魔王はいなかったらしい。

 

 ただ一つ確かなことは、魔王の部屋には人間の学園生活にまつわる書物がたくさん置いてあり、よほどそういったことにあこがれをもっていたんだなということだった。

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