第229話世界最強の問題児

 僕は世界最強のクイズ王だ。


 どんな難問でも必ず解答に導いてみせる。


 クイズにおいて僕の右に出るものはいない。


「じゃあ左から出よっか?」


 そう言って右側で仁王立ちしている女子高生が一人。


 世界最強の問題王だ。


 誰も解けない難問を出してくる超・難解な女子高生。


 ついでに僕がずっと好きだった相手だ。

 

 そんな僕の心を読んでいたかのごとく、君はとんでもない難問を突き付けてきた。


「この問題を解いたら、わたしをくれてやる」


 すごいことを言ってきた。


 クールなメガネを正しながら、見下すように僕を見てくる。


 ナメてるな……ぜったい解いてやるッ!


 僕が導かれた部屋は真っ白な密室だった。


 そこには壁一面に張り巡らされた付箋があり、謎の数字が長々と書かれている。


 はたしてこれが意味するものとは?


「…………」


 しばらく黙考した僕は、一つの答えに辿り着く。


 ここに書かれている数字は地図の座標を表していた。


 ノートパソコンを開き、僕は座標を入力していく。


 そしてすべてを打ち終わったあと、上空視点からその座標を線で繋いでみた。

 

 するとどうだろう。


 それらの点が繋がって一つのメッセージになっていた。


【おめでとう】


 ――僕がそう口にしたと同時、後ろから君が拍手しながら登場する。


 君は不敵に微笑みながら、


「あなたは二人で人生を歩むという世界最強の難問に挑む勇気はある?」


 そんなことを言った。


 めずらしく照れ臭そうに視線を逸らしながら。


「わたしをくれてやる」とは、本当だったらしい。


 不器用な君の瞳を見据えながら、僕ははっきりと伝える。


「その難問、受けて立つよ」


 最後の問題を出し終えた君は、


「途中で投げ出さないでね」


 と言いながらメガネを外して微笑んでいた。


 ――僕は世界最強のクイズ王。


 どんな難問でも必ず解答に導いてみせる。

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