第227話眠気に襲われたときの対処法

 眠気がひどくて困っている。


 授業中や、やらなきゃいけない作業があるときに限って瞼が重い。


 コーヒーや栄養ドリンクじゃあ、もうどうしようもなさそうだ。


 机でぐったりしていると、君が僕の肩を叩く。


 眠気を消すためにいいことを思いついたそうだ。


 瞼の上をつねると目が覚めると言われた。


 試しにやってみてと言うので恐る恐る二本の指でつねってみる。


「……いてッ!」


 ……思った通り痛かった。


「どう? 目が覚めた?」


 そう尋ねられたので「覚めたみたい」と返したはいいが、次の授業であっさり意識が飛んでしまう。


 ダメだ。


 思った以上に眠気は手強い。


 続いて君は僕をある場所に呼び出す。


 学食のおばちゃんが特製ドリンクを開発したらしい。


 なんでも相当目が覚めるらしいのだが、とりあえず飲んでみることにする。


 カウンターで差し出されたドリンクを受け取り、僕はいっきにそれを飲み干した――


「……ッ!?」


 強烈な味とニオイが口の中を刺激する。


 真っ赤な色だからトマトかなにかと思ったけれど、純粋なタバスコだった。


 ニンニクや他の香辛料も入っているらしいけど、目が覚める以前に体調を崩しそうだ。


 案の定、授業中何度かトイレに通う羽目になる。


 ゲッソリした状態で、未だ瞼は重いままだった。


 もう眠気はとれない。


 そう結論付けて僕は諦めているのだが、それでも君はいい方法がないかと頭を捻ってくれる。


 そんな君を見ていると、今でも胸の辺りが熱くなることは内緒だ。


 決してタバスコのせいじゃない。


「君のことを考えすぎているから眠いんだよ」


 なんて真実は言えるハズもなく、僕は今日も謎のドリンクを飲んだり、瞼の上をつねったりしている。

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