第224話想いが伝わる不思議な風鈴

 想いが伝わる風鈴があるらしい。


 聞くところによると、その風鈴に自分の名前を彫って相手に渡すと、音を聴くたびに送り主の想いが伝わるという。


 いかにも嘘くさい話だが魅力を感じた。


 口下手なわたしが想いを伝えるには、もってこいだからだ。


「ほんとに売ってたよ……」


 街の片隅にぽつんと置き去りにされたような一軒家。


 そこに風鈴は売られていた。


 とりあえず家に持ち帰って、青いガラスの表面に名前を彫ってみる。


 これでほんとに大丈夫なのかな?


 心配になったけど今は噂を信じるしかない。


 プレゼント用の箱に詰めて、次の日にあなたに渡すことにした。

 

 男子水泳部のあなたは、いつも部活に明け暮れている。


 風鈴を渡したところ「ありがとう」と言って受け取ってくれた。


 とりあえずやることはやった。


 あとはあなたが風鈴の音を聴いてくれればいいだけ。


 わたしの想いが届いてくれるといいのだが……。

 

 想いを込めるとき、わたしは水泳部の練習風景を想像した。


 あなたは毎日頑張っているから、結果に繋がってほしいと考えた。


 それこそ大会で優勝するくらいにだ。


 わたしの胸のときめきが、これで届いてほしいと願う――。


 それから三週間後。


 なぜかわたしは男子水泳部全員から告白された。


 プールサイドに呼び出されて正直焦る。


 どうやらあなたは風鈴をプールサイドに飾ったらしく、部員がその音を聴いて大会へのモチベ―ションが爆発的に上がったらしい。


 その結果、ウチの水泳部が上位を独占するという異常事態に……。


 想いは違う形で届くことになったわけだが、この結果を喜ぶべきかどうか……。


 とりあえずあなたには、自力で想いを伝えるしかないようだ。

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