第220話13番地の悪魔と、わたしが迷い込んだ迷路

 この街では不思議な出来事が起こる。


 13番地に踏み入ると、悪魔がその人を試すというのだ。


 具体的には知らぬ間に迷路に放り込まれ、脱出を迫られるらしい。


 たった今、わたしもその犠牲者となった。


「策は……ある!」


 目の前に広がる歪んだ街の風景。


 血のように赤い空を見て、わたしはニヤリと口の端を吊り上げた。


 実を言うと迷路の攻略に関しては見当がついている。


 その方法はシンプルで、「大切な人」を思い浮かべることで道が開けるというのだ。


 わたしの大切な人――それは一つ年上のあなただ。


 スポーツもできて成績も優秀だからたくさんの女子に好かれている。


 もちろんわたしは片思いだけれど、一途に想い続けているのは間違いない。


 わたしはあなたと関わりのある場所を思い出して、歪んだ街に道を開いていった。


 体育祭で重い器具を運ぶのを手伝ってくれたり、学園祭では屋台の運営に協力してくれたのを思い出す。


 次々と浮かぶ記憶を辿れば、気付いたらもとの街に戻っていた。


「やったー!」


 わたしは喜びのあまり飛び跳ねる。


 このことをあなたに伝えようとして、次の日教室を訪れた。


 しかし、わたしは見てはいけないものを見てしまった。


 窓際で互いに手を握る二人。


 あなたは一つ上の先輩と付き合っていたのだ。

 

 それを見たわたしはそーっと教室をあとにして、一人机の上で項垂れる……。


 それからというもの、わたしが悪魔に出会うことはなかった。


 こうして迷路から脱出できたのに、未だわたしは迷子のような足取りで街をさまよう――。

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