第217話シンデレラじゃない僕が、かぼちゃの馬車に乗せられる理由

 家族は旅行に出かけた。


 一方、僕は何をしているのかというと家で留守番をしている。


 テニスの部活があるから、やむなく旅行を断念したというわけだ。


 誰もいない部屋で大の字になって天上を見上げる。


「お土産なんだろうなぁ……」


 そんなことを呟いていると、


「パーティーはまだ終わっていないわ!」


 そんな声が聞こえたから窓を開けて外を覗いてみる。


 するとそこには「かぼちゃの馬車」を操る女の子の姿があった。


 どう見ても同じ学校の君だけど、なんで空中にフワフワ浮いてるの?


 聞いたところ魔法使いになったらしいのだが、時間がないから詳しい説明はまた今度とのこと。


 とりあえず時間がないから早く乗れとせっついてくる。


 かぼちゃの馬車って……僕はシンデレラじゃないぞ。


 言われるがままに乗ったのはいいが、行き先がどこかわからない。


 空中を駆け出した馬車は夕暮れの空を一直線に進んで行く。


 僕は「どこに行くの?」と尋ねてみたのだが、「う~ん……とりあえずお城のあるとこ?」と君は疑問形で首を傾げた。


 なんて曖昧な魔女なんだと思いながら馬車に揺られること12時間……。


 僕たちはフランス上空をさまよって、とある豪邸に降り立った。


「ちょっとした旅行じゃん……」


 げっそりした顔で外に出ると、一人の女性が馬車を見て駆け付けてきた。


 魔法で翻訳したところ、料理で使うかぼちゃが切れて困っていたそうだ。


 君は馬車をかぼちゃに戻して女性に手渡した。


 すると女性は喜んでお礼がしたいという。


 そういえばこの人どこかで見たような……。


 それはテニス全仏オープンの優勝者だった。


 僕たちは食事をご馳走になり、そのあと豪邸のコートでテニスを教わる。


 ラリーを繰り返しながら、これほどのお土産はないと、僕は満足気にスマッシュを放った。

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