第216話なんでも唐辛子を振りかけるわたしの悩み

 わたしはいろんなものに唐辛子をかける。


 うどんやそばはもちろん、たこ焼きやカレーにもかける。


 友達からは「かけすぎじゃないの?」「からだ大丈夫?」と心配されるが全然平気。


 今日も一味を忍ばせて学校へと出掛ける。


「なにかないかなぁ……」


 新たな刺激を求め、わたしは一味の瓶を眺めていた。


 今まで口にしてきたものには、ほとんど唐辛子をかけて食べている。


 それこそ「唐辛子+食べ物」で知らない味はないと思っていた。


 そんなところに現れたのが料理人を目指すあなただ。


 男子の中では激辛通としても知られていた。


「こんなのはどう?」


 そういって勧めてきたのがコーヒーだ。


 なるほど、普通なら砂糖を入れるだろう。


 これは試したことがないと思っていたのだろうが、既に一味コーヒーは試したことがあった。


 それを聞いてあなたは「むむ」と唸る。


 次に提示してきたのはチョコだ。


 わたしは「ああ、なるほど」と頷いて、一味の掛かったチョコをバリボリと食べた。


 これも前に試したことがある。


 むしろ唐辛子を使ったチョコは販売してるから、知ってる人も多いのかな?


 まぁ、わたしの食べ方は極端すぎるけど……。


 結局、放課後までいろんなものを考えたけど、わたしが食べたことのない味を探すことはできなかった。


 あなたは「もっと勉強して出直す!」といって帰路に就く。


 そこでハッとなったわたしは「ちょっと待って!」と呼び止めた。

 

 あった、食べたことのないもの。


 それはあなたの手料理だ!


 ――翌日からあなたは、自作のレシピで工夫を凝らしたお弁当を作ってくる。


 唐辛子を掛けてもゲテモノにならないあたりが、なるほどプロを目指すあなたらしいと思った。

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