第213話真夏に降る雪と、二人のイベント

 異常気象により、真夏に雪が降りはじめた。


 これじゃあ海水浴やバーベキューができない……。


 仕方なく僕は、しばらく家の中で過ごすことにした。


「よっす! 元気?」


 そんなとき現れたのが同級生の君だ。


 同じく夏のイベントを楽しみにしていた一人でもある。


 僕の部屋に上がるなり、さっそく本題を口にした。


 せっかくだから無理矢理イベントをやらないかという相談だった。


「でもなぁ……」


 僕は頭を捻る。


 というのもできることは限られるからだ。


 いくらなんでもこの寒さで海に入ることはできない。


 冷静になって「できること」と「できないこと」を拾い上げていく。


「雪の中でもできることといえば……」


 君と紙に書き出した結果、できそうなことが一つ見つかった。


 花火だ。


 雪が降る真夏の夜空に、大きな花を咲かせようというものだ。


 想像してみるとなんだか楽しそう。


 だんだんノリ気になってきた僕は、たくさん花火を買って当日に備えた――。


 ところが打ち上げの日。


 君は熱を出して寝込んでしまう。


 連日続く寒さのせいで、風邪を引いてしまったらしい。


 花火は中止するかに思われたが……


「それじゃあ、いくよ~。せーの!」


 ドーンと。


 夏の夜空に大きな花が咲く。


 ちらちら舞う粉雪と相俟って非常に神秘的な情景だ。


 僕は浜辺で打ち上げた花火の光景を、ライブ映像で君に見せたのだ。


 スマホ片手に、ベッドの上で君は大いに喜んでいたという。


 それから数日後、雪は止んだ。


 そして例年通りの夏がやってくる。


 体調が戻った君は、「今度は何する?」と問うてきた。


 さらに顔を覗き込みながら「ねぇ、二人だけで海行かない?」なんて尋ねてくる。


 ……さりげなく手まで握ってるし。


 思わず雪が降るんじゃないかなと空を見上げると、燦々と太陽が照らしている。


 ――うん、とてもいい天気だ。

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