第211話昼寝の代償

「う~ん……寝れない」


 そう言って起き上がったのが夜中の十二時ごろだった。


 ベッドの脇にある時計を見て僕は頭を掻く。


 学校から帰ってきて爆睡したせいか、夜中に眠れなくなってしまった。


 どうしよう……。


 ムクリと布団から這い出し、スマホで動画を観ることにした。


 適当に時間を潰していたらそのうち眠くなるだろう。


 そう思っていたのだけれど、ふとメッセージの新着を見つけて読んでみる。


【起きてる?】


 ――それは女子生徒の君からだった。


 僕と同じで眠れないようだ。


 そういえば学校で体調が悪そうだったけど不眠と関係あるのかな?


 それに話し掛けても反応がなかったし、妙に落ち着きがなかったようにも見える。


【今から外出れる?】


 と続けられたメッセージに、【いいよ】と返信して僕は玄関を出た。


 待ち合わせ場所は近所の公園。


 君は滑り台の上に立って夜空の星を眺めていた。


「お待たせ」


 僕が声を掛けると、わっ! と慌てた様子で滑り台から下りてくる。


 とりあえずベンチに座ると、少し緊張した面持ちで君は口を開いた。


「わ、わたしは、あなたのことが――」


「好きです」と、たどたどしい口調でそう言った。


 僕はびっくりして目を見開く。


 心臓の音がでかい。


 どうしよう、今度は僕のほうが緊張してきた。


 ちゃんと答えを出さなきゃと思ったそのとき、君はふにゃ~っと萎れるように僕の肩に倒れ込む。


 告白したら安心して眠ってしまったようだ。


 下手に動くこともできないまま、僕は夜空を見上げる。


 君が目を覚ましたらちゃんと答えよう。


 そう思っていろいろと考えているうちに、だんだん眠たくなってきた。


 ――星明りの下で、二人の寝息が夜空に溶ける。

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