第206話捜査官のわたしは、高校に潜入してアガる。

 わたしは一匹オオカミの潜入捜査官。


 見た目が若いという理由で、とある高校に潜入することになった。


 作戦内容は巷にはびこるドラッグの出所を探るというもの。


 この学校のどこかにバイヤーが潜んでいるとの情報があった。


 必ず捕まえて星を挙げてやる!


 何年ぶりかに着る学生服は、思いのほかテンションを上げた。


 わたしは我に返ってかぶりを振る。


 ダメだダメだ。


 星以外のモノでアガってる場合じゃない。


 わたしは鉄の女。


 一匹オオカミ。


 落ち着いて息を吐き出す。


 深く深呼吸。


 スーハー、スーハー。


「どうかしたの?」


 わたしの体調が悪いと勘違いしたのか、一人の男子生徒が声を掛けてくれた。


 瞬間、捜査官の剪定眼が少年の全てを見抜く。


 ――イケメンだ――


【星を発見しました】


 と、思わず本部に連絡を入れそうになった。


 危ない。


 こんな上玉のブツはそうお目に掛かれないだろう。


 バイヤー(訳:クラスの女子)の手に渡る前に押収(訳:ゲット)しておいたほうがよさそうだ。


 それからわたしは極秘任務(訳:婚活)を遂行する。


 毎日あなたのことを観察して、ハァハァしていた。


 しかしあるとき、薬物のバイヤーが現れてあなたが黒幕の組織に攫われてしまう。


 組織のヤツらは凶暴で、他の捜査官を蹴散らせてしまった。


 頭にきたわたしは単身でアジトに乗り込む。


 誰しもが思った。


 わたしは殺されると。


 しかしそんなことはない。


 なぜわたしが『一匹オオカミ』なのか?


 その理由は――


「一度アガったら誰にも止められないからだぁァァァ!!」


 ――こうして悪の組織は壊滅した。


 一匹オオカミは伝説になる。


 だけど後に家庭を築いて「三匹」になるのは、もう少し後の話。

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