第205話幽霊と、君と帰る一本道

 ここは人気ひとけのない住宅街の一本道。


 最近この辺りに幽霊が出るらしい。


 僕は高校生でありながら、霊媒師でもある。


 だからその幽霊をなんとかしてくれと住民から依頼されていた。


 現場は学校からの帰り道だったので、実際に歩いてみる。


 すると確かに人でない者の気配がしたので、振り返ってみた。


 電信柱の陰にセーラー服の女の子が顔を引っ込める。


 見たところ僕と同じ学校のようだが……なんでここに?


 疑問を向けると、君はモジモジしながら「あなたのことが心配で……」と言う。


 友達から幽霊の話を聞いて、あとをつけてきたそうだ。


 聞くところによるとこの幽霊は、人間のフリをして近づき、心を許した人間を襲うらしい。


 君はどうもその類に詳しいようだ。


 僕からのお願いで、次の日から調査を手伝ってもらうことにした――。


 翌日からは毎日君と下校した。


 例の一本道を通り、二人で何気ない会話を交わす。


 いつもは控え目な君も、話しているときはいきいきとして見えた。


 そこでふと君が電柱を指差すので、僕はなんだろうと視線を向けてみる。


 その瞬間、突然馬乗りになった君が鞄からナイフを取り出し、僕の心臓めがけて突き立てようとした。


「や……め……ろ!」


 咄嗟に用意していたお札を君の額に貼りつける。


 君は悶えながら蹲ると、口から黒い煙を吐き、そのまま気絶した。


 どうやら幽霊に身体を乗っ取られていたようだ。


 もう成仏させたから大丈夫だよ。


 命に別状はなく、一本道は平和な姿を取り戻した。


 それからも僕たちは一緒に下校することが増えた。


 そういえば幽霊に詳しい君だが、一つだけ情報を改めてほしい。


 この辺りには、心を許した人間を守る霊媒師の幽霊がいるってね。

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