第201話僕の健康と、君のカロリーと。

 毎日僕は散歩をしている。


 健康のつもりで歩きはじめたことがきっかけだった。


 歩くことはいいことだと聞いていたが、なるほど確かに身体が軽くなった気がする。


 その日の寝つきもいい感じなので、学校のみんなに勧めてみた。


「じゃあ、わたしも歩く!」


 そこで元気よく手を挙げたのは、活発な女子の君だった。


 最初は「わたしも」の意味をちゃんと理解していなかったが、答えは放課後に明らかになる。


 僕が家に帰って散歩用のジャージに着替えていると、玄関のインターフォンが鳴った。


 見にいくと、「早く行こ!」と同じくジャージ姿の君が待っていた。


 背中にはリュックを背負っている。


「わたしも歩く」というのは「一緒に歩く」ということだったのか。


 まぁ、別にいいけど。


 それから二人は水辺の公園を歩く。


 リズムよく一定の歩調でサクサク前に進んで行った。


 季節は7月だけど夕暮れ時の風が涼しい。


 緑を茂らせた木々が揺れて、さわさわと葉の擦れる音が静かに響いた。


 なんか余計なことを忘れて歩くことに集中できる。


 こうしていると不思議な感覚で、汗と一緒に悪いものが流れていってるような気がする。


 ある程度歩いたところで、僕たちは休憩することにした。


 ベンチに座って一息つく。


 すると隣で君がリュックを開けた。


 中から水筒を出したので水分補給をするのだと思った。


「……ん?」


 次に出てきたのは大きな弁当箱だった。


 しかもそれが三つも。


「ああ、お腹へった! 一緒に食べよ!」


 君は無邪気に笑いながらそんなことを言う。


 運動後の食事が目的だったのか……。

 

 消費したカロリーはどこへ……と思いながらも、この味を知ってからは君との散歩が楽しみで仕方ない。

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