第200話200人に分身したわたしは、1人の人を好きになる

 朝起きたらわたしは200人になっていた。


 何を言ってるんだとツッコまれそうだが、見たまんまの光景だ。


 部屋の中に、200人分のわたしがひしめき合っている。


 とにかくここから出よう。


 詳しい話はそれからだ。


 わたしが増えたことに関しては、家族もびっくりしていた。


 とりあえず人数分の着替えを買ってきて、今後のことについて話し合う。


 学校側とも協議した結果、あまった寮の部屋を貸してくれるそうだ。


 しばらくここでお世話になろう。


 各々バイトで生活費を稼ぎながら、奇妙な学校生活が始まった。


 そんなわたしたちは一人の男の子を好きになる。


 寮でとなりの部屋に住んでいるあなただ。


 もし分身していなかったら、わたしは即座に告白していただろう。


 いくらなんでもライバルが多すぎだ。


 それ以来200人のわたしによって、あなたへの愛情アピールが激化していった。


 お弁当を作ったり、部屋の掃除をしたり、洗濯物をしてあげたり。


 あなたの身辺のことは積極的に手伝った。


 しかし、あまりにアピールが続いたため、さすがのあなたも混乱して倒れてしまった。


 わたしたちの夢にうなされながら、そのまま翌日を迎える――。

 

 わたしたちはあなたを見て唖然とした。


 目の前には199人のあなたがいた。


 なんとかしてくれと強く願った結果、奇跡がおきたのかもしれない。


 とにかく恋のハードルは多少下がったものの、一人は結ばれないという未来に戦慄を覚えた。


 恋愛バトルはさらに激しくなっていき、結果、あぶれたのはわたしだった。


 しかも、あぶれたせいで住むところまで失ってしまう結果に……。

 

 実家に帰ったわたしはベッドに倒れ込む。


 もし過去に戻れるなら、200人になる前にあなたに気持ちを伝えればよかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る