第198話わたしは夏休みの肝試しで、銀髪の少年に出会う

 夏休みに肝試しをすることになった。


 参加するのは同じクラスのみんな。


 男女一人ずつペアになって目的地を目指すというルールだ。


 ただ心配なのは開催場所が昔、墓地だったということ。


 ひょっとして本物の幽霊とか出ないよね?


 ま、わたしは怖くないけど。

 

 そして本番当日。


 わたしはペアの男の子と森の中を歩いていたが、問題の墓地に差し掛かったところで相方は逃げ出した。


 ライトを持ったまま、わたしはぽかんと放心状態になる。


 背の高い木々に囲まれた空間にぽっかりと現れた墓地。


 燃え尽きた骨の色をした墓石は、月明かりを反射して神秘的に輝いていた。


「こんなところでなにしてるの?」


 突然、背後から声がした。


 ビクっと振り返ると銀髪の少年がさわやかに微笑んでいる。


 こんなときになんだけど、すごくわたし好み。


 あなたはわたしのもとへ歩みより、よかったら一緒に行こうと言った。


 無意識に手を引かれながら、わたしは月明かりが照らす山道を進んで行った。


 なんだか不思議な気分。


 初めて会ったはずなのに、あなたのことを昔から知っているような気がする。


 もしかしてわたしたち、前世で恋人同士だった?

 

 そんなロマンチックな想像をしているうちに、ゴールへと辿り着く。


 しばらくあなたの顔に見惚れていると、不意にその銀髪がサラリと外れた。


「どう、おどろいた?」


 そう微笑むのは、道の途中で逃げ出した相方だった。


 つまり銀髪の少年に変装していたのだ。


 全てはわたしを驚かすためのドッキリ。


 クッ、わたしの乙女心をぉ……!


 感想を求めるあなたに、わたしは拳を握って言う。


「あそこの墓石、一つ増やしてあげよっか?」


 肝試しパート2のはじまりだ。

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