第196話旧校舎に眠る伝説の相合傘を探しに行ったら……
この学校に伝説の相合傘があるらしい。
その傘に入った男女は、必ず結ばれるという。
わたしは興味津々だ。
さっそく傘があると言われる旧校舎に向かった。
――木造校舎は静かだった。
まだ昼休みなのに辺りは薄暗くて不気味。
そんな中、前方に細長い物体を視認する。
まさか……伝説の傘だ。
本当にあるなんて……。
長年放置されていたはずなのに埃ひとつ付いていない。
傘を開くと首筋の辺りに悪寒が走った。
「君が僕を起こしてくれたのかい?」
声の方に振り返ると、学ラン姿の男の子がいた。
背が高くてカッコイイが、視線を落とすと地面に足がついていないことに気付く。
わたしは尻餅をついて震えていると、男の子は自分を幽霊だと言いながら笑った。
そして自己紹介を兼ねた昔話をしてくれる。
どうやらこの幽霊さんは好きな人を迎えに行く途中で死んでしまったようだ。
土砂降りの中、傘を差して飛び出したはいいが、その道中で事故に巻き込まれたらしい。
遠い目をしたあと、幽霊さんは言った。
「傘の力は本物さ。せっかくだから使うといい」
と。
だけどわたしは頭を振る。
幽霊さんに頼んである場所へと足を運んだ。
それは幽霊さんが好きだった人の家。
彼女は素敵なおばあさんになっていた。
当時のことを話して傘を渡すと、幽霊さんとの想い出を懐かしむように微笑んで傘を開いた。
隣には学ラン姿の男の子。
気のせいか、おばあさんの姿が学生のころに戻ったように見えた。
そして傘を閉じたとき、当時の約束を果たした幽霊さんは空へと昇る。
傘はただの傘になった。
それでもよかったとわたしは思う。
あの大きな虹は、あなたとおばあさんをちゃんと結んでくれたから。
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