第195話眠気が吹っ飛ぶコーヒーと、理想の進路希望

 眠気が吹っ飛ぶコーヒーがあるらしい。


 そんな情報を教えてくれたのは近所に住む君だった。


 君は僕と違う学校に通っているが、昔からの付き合いがある。


 小さいころはよく一緒に公園などで遊んだものだ。


 そんな僕たちも、もう受験生。


 お互い進学や就職について語ることも増えた。


 将来はどんな大人になっているのだろう?


 まずは志望校に受かるところからはじめようということで、今度ウチに集まって勉強することになった。


 ……しかし。


「ね、ねむ~……」


 目の下にクマをつくった僕は、ゾンビみたいに呻いたまま教科書に顔を伏していた。


 頭を使うとすぐ眠たくなる。


 これは昔からの癖だからどうしようもない。


 すると君がコップに飲み物を淹れて持ってきた。


 芳ばしい香りが部屋の中を満たす。


 これが噂に聞くコーヒー。


 どんな眠気も吹っ飛ばす秘密兵器だ。


「こ、これは……!」


 一口飲んで一分もしないうちに頭の中が鮮明になる。


 なんかヤバイ薬でも入ってるんじゃないかと疑うレベルで冴えた。


 これなら安心だと教科書に向き直るが、なぜか君がページを閉じる。


 そして顔を上げた僕に問うた。


「あなたのお嫁さんになっちゃ……ダメ?」


 進学や就職だけでなく、結婚という進路希望もあるということだ。


 僕は予想していなかった難問に頭を捻る。


 いつもなら眠たくなるだろうが、コーヒーのせいでそうはならない。


 どうも答えを聞くまで僕を寝かさないようだ。

 

 なんという計画的犯行。

 

 すると君は「既成事実をつくるという答えもあるよ?」と身体を寄せる。


 ……さすがにそれはマズイ。


 というかもう勉強どころじゃない……。


 そこで僕は思い出す。


 そういや昔、公園でやってたおままごとも、こんな内容だったような気がする……。

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