第192話目に映る男子全員がイケメンに見える病気になりました

 わたしは、見る人全てがイケメンに見える病気に罹った。


 最近見つかった病気らしく、初期症状は風邪にそっくりだ。


 身体が怠く熱っぽい。


 しかし目に映る男性すべてがイケメンに見えるってヤバイよね……。


 とにかくこんな状態じゃ学校にも行けない。


 ゲホゲホ……。


 今日はゆっくり部屋で休むとしよう。


「おじゃましまーす」


 玄関のドアが開き、誰かが入ってきた。


 モゾモゾと布団から這い出たわたしは部屋の扉を開けてみる。


 すると同じクラスのあなたが荷物を持ってやってきた。


 気のせいかあなたの顔がイケメンに見える。


 いつもは普通の男子生徒なのに。


 これが病気の症状か!?


「ど、どうしたの?」


 はだけたパジャマを整えながらわたしは尋ねる。


 あなたは「これを見てほしいんだ」と荷物の中からアルバムを取り出した。


 この間クラスで開いたバーベキューイベントの写真らしい。


 業者に頼んでアルバムの見本を作ってもらったから、クラスのみんなに見てもらっているのだという。


 わたしはページをめくりながら、一枚一枚写真を確認していった。


「――ぐふぁ!」


 そしたらクラスの男子全員がイケメンに見えて卒倒してしまう。


 鼻血を流しながら倒れたわたしを見て、あなたはそうとう狼狽えたようだ。


 ――それから二時間くらいしてわたしは目が覚める。


 おでこには揺れタオルと、傍らには机で伏して眠るあなたがいた。


 どうやらわたしを介抱してくれたみたい。


 あれ? そういえば身体が軽い。


 眠ったから体調が治ったのかも?


 わたしは寝息を立てるあなたの顔をじーっと見つめる。


 それはいつも見慣れた普通の顔だ。


 その顔を見つめながら自分の額を触る。


 あれ? まだ身体が熱っぽいな。

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