第191話絶対願いが叶う短冊と、天気予報を予測しての計画的犯行

 君は、なんでも願いが叶う短冊を手に入れたらしい。


 学校の帰りにそんなことを言われた。


 嬉しそうに見せてくれたそれは、一見すると色とりどりの紙にしか見えない。


 ほんとにこんなもので願いが叶うのだろうか?


「ね、今晩ためしてみようよ!」


 君はニコニコしながら誘ってきた。


 空に願い事を届けようというのか。


 しかし七夕はとっくに過ぎているが大丈夫かな?


 あまりにも君がノリ気だったこともあり、気分を害さないためにも僕は申し出を受け入れることにした。


 ――その日の夜。

 

 僕は願い事を考えて君の家にお邪魔する。


 部屋には笹の葉が用意されてあり、準備は万全だった。


「さ、座って」


 君に促され、とりあえず丸いテーブルの前に座る。


 絨毯の上に腰を下ろし、君と一緒に願い事を書き始めた。


「うん。じゃあ飾るね」


 君は願い事を伏せた状態で短冊を笹に飾る。


 何を書いたのか尋ねてみると「ないしょ」といたずらな笑みをこぼした。


 続いて僕も書き終えて笹の葉に飾る。


「なに書いたの?」


 と尋ねられたのでこちらも「……内緒」と返しておいた。


 すると君は隙を見て僕の願い事を勝手に見てしまう。


 そこに書かれた「彼女がほしい」という文字を見て、君は笑い出してしまった。


 恥ずかしい……。


 と、そこで突然の雨が降り始める。


 しかもかなりの豪雨だ。


「しばらく外には出られないね」


 そう言いながら空を眺める君。


 僕はさっきの仕返しに、隙を見て君の願い事を盗み見た。


 するとそこには「好きな人と一夜を過ごす」と書かれていた。


 振り向いた君はクスっと笑って窓を閉める。


「すごい。願い事、叶っちゃった♪」

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