第189話どちらか一方が生き残れる――物理攻撃が効かない悪魔を倒す方法は?

「さぁ、殺し合いをしてもらおう」


 目の前の悪魔はそう言った。


 ここはとある無人島。


 愛する男女だけが連れて来られるという奇妙な場所だ。


 辺り一面、大量の白骨とナイフで埋まっている異様な光景。


 まさか本当に実在したなんて……。


 悪魔が僕たちを連れて来た理由はただ一つ。


 今から殺し合いをしてもらい、生き残った方だけを帰還させるらしい。


 この島の噂を聞きつけて調査に来たら、本当に巻き込まれてしまった。


「さぁ、はじめてもらおう」


 僕たちに短いナイフが渡される。


 これを使って戦えということだ。


 一瞬、この武器を使って悪魔を倒せないかと思考する。


 しかしそれを読んでいたかのように、「我にはきかぬ」と悪魔は自分をナイフで切りつけた。


 ……一滴の血も出ない。


 物理的な攻撃が効かないことを見せつけられ、君は愕然としてナイフを落とした。


 僕は膝を突く君を抱きかかえて、なんとか立たせる。


 残酷な笑みを浮かべる悪魔を前に、僕たちは覚悟を決めた。


「さぁ! 醜い姿を見せてくれ!」


 ――悪魔が叫んだ瞬間。


 僕たちは互いに自分の心臓を突き刺した。


 そしてとても穏やかな表情で、悪魔を見つめる。


「なぜだ!? なぜ殺し合わない!?」


 動揺する悪魔。


「こ、これが僕たちの答えだ……ッ!」


 殺し合いをせず、二人なりの愛のかたちを見せつけたことで、悪魔は絶叫と共に消滅した。


 人間の醜い部分以外は、悪魔にとって猛毒なのだ。


 悪魔の消滅した島は静かになった。


 ――ただ、これで終わりではない。


 僕たちは生きていた。


 君がナイフを落としたときに、こっそり用意したマジックナイフにすり替えていたからだ。


 前回の帰還した犠牲者である親友から話を聞いていたことで、今回のような作戦を決行することができた。


 無事に悪魔を倒し、親友の仇をとることができた。


 水平線の向こうに夕日が沈む。


 僕たちはそれを眺めながら、静かに二人で手を握った――

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