第188話この街で多発する奇妙な失踪事件の真相

 あなたが忽然と姿を消した。


 通学路に残された一足の靴。


 それ以外の所持品は現場に残されていない。


 行方を辿る手掛かりが少ないことから、警察も手をこまねいていた。


 最近この街では奇妙な失踪事件が相次いでいるのだ。


 そのことも相俟って、巷では神隠しではないかとウワサが広まっていた。


「ぜったい見つけてみせる」


 わたしはあなたの足取りを追うことに決めた。


 こう見えて実は不思議な力を持っている。


 現場の思念を読み取り、当時の状況をトレースするのだ。


 靴が置き去りにされていた場所は、なるほどあなたの思念が濃厚に残留している。


 ここから思念の痕跡を辿って、あなたがいる場所を突き止めてみせる。


 ――行方を追っていると、とある廃墟に辿り着いた。


 見るからに幽霊が出そう。


 まさか本当に心霊の類じゃないでしょうね?


 あなたは神社のせがれだから、霊感は強いとか豪語してたけど。


 だからといって安心はできない。


 わたしは廃墟の中に入った。


 そして思念が一番強く残る棺のような箱をゆっくりと開けてみる――。


 ザクッっと。


 何かがわたしの心臓を貫いた。


 胸元から突き出した鋭利な短剣から、青いしずくが落ちる。

 

 わたしの血だ。


「化け物め……」


 後ろには短剣を握ったあなたの姿があった。


 ……そう、はじめからバレていたようだ。


 妖怪の類であるわたしは、定期的に好きな男の子を街から攫ってコレクションしていたのだ。


 わたしの正体に気付いたあなたは、わざと思念を残してここにおびき寄せたというわけ。


 スキを見せた瞬間に、奉納した短剣でわたしにトドメを刺したのだ。


 ああ――残念。


 もう少しで手が届きそうだったのに……。


 目を閉じる瞬間、きらりと光る。


 あなたの頬を伝う、透明なしずくが――

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