第187話今日からはじめる君の魔改造計画

 僕を魔改造する計画が浮上した。


 言い方がアレだが、要するに僕をダイエットさせようというものらしい。


 すべては君の提案だ。


 甘いモノが食べれなくなると思うとツラい。


 特に君の作るケーキは絶品だったのに……。


 うぅ、こんな調子で僕はスリムになれるのだろうか?


「それじゃあ頑張ってね!」


 ジャージ姿の僕に、君はさわやかな笑顔を向ける。


 今日から運動漬けの日々がスタートだ。


 マラソン、縄跳び、鉄棒――


 昔は難なくこなしていたそれらが、まるで拷問のように感じる。


 自分の身体ではないかのように、自由が利かない。


 滝のような汗だけが止めどなく流れていく。


 もうダメだ……。


 目の前がくらんだ僕は、そのまま体調を崩して気絶してしまった――。


「――い! おい!」


 遠くで君の声がして目が覚める。


 僕は個室に運ばれたらしく、ベッドから下りて部屋を出ようとした。


 すると側にあった鏡に、スリムな自分の姿が映って唖然となる。


 ちょうど外から入ってきた君が手を叩いてこう言った。


「おめでとう。君を魔改造させてもらったよ」


 ――信じられないことに、君は怪しい手段を使って僕を痩せさせたらしい。


 一体どんな手を使って……。


 とにかくスリムになった僕は、それから快適な日々を過ごした。


 なにより羽を得たように身体が軽くなった。


 運動することが楽し過ぎて、僕は取り憑かれたようにスポーツにのめり込んでいった――。


 それから数年後。


 ムキムキの身体を手に入れた僕は、プロのボディビルダーになる。


 今は必然とタンパク質の多い食事が中心だ。


 君はケーキを食べさせる相手がいなくなって寂しそう。

 

 再び僕を太らせるために、今度はスイーツを用いた魔改造計画が進行する――。

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