第184話暗殺者のわたしが考えた完璧な計画書

 わたしは暗殺者だ。


 現代日本に暗殺者がいるなんて、どこの中二病だよとか言われそう。


 でも実際いるんだから仕方ない。


 高校生でもプロだから。


 そして今回、依頼があった。


 内容は同級生のあなたを殺せというもの。


 わたしは計画を頭に入れ、懐に武器を仕込む。


 何食わぬ顔で学校へ行き、放課後を待った。


 いよいよ実行のときだ。


「あ、いたいた」


 誰かがわたしの肩を叩いた。


 声の方へ振り返るとあなたが笑っている。


 これからスイーツを食べに行くらしいのだが、一人で店に入るのがイヤなので同行してほしいという。


 わたしはこれからあなたを殺そうというときに……。


 ま、これも最後だからいいか。


 わたしは二人でスイーツ店へと向かった。


 ところがそこで想わぬことを告げられる。


 小声で話すあなたは、自らを暗殺者だと言った。


 わたしを殺すように命じられたようで、本来ならスイーツに毒を仕込んでこの店を去る予定だった。


 でもあなたはわたしを殺したくない。


 だから一緒に逃げようという。


 自分の秘密をバラすなんて、そんなことしたらもうこの世界には戻れない。


 むしろ一生追われることになる。


 つまり命をかけた告白。


 駆け落ちも同然。


 ……わたしは心を動かされてしまった。


 所詮、思春期の学生ということか。


 いいよ、一緒に逃げよう。


 その日以来、わたしたちの姿を見たものはいない――。


 …………


 と、ここで妄想は途切れる。


 わたしは懐に仕舞っておいた「恋の計画書」を落としたことに気付いたからだ。


 あなたとドラマチックに駆け落ちするための計画書。


 これは後にスイーツ店の店員さんが拾ったことでわたしの手元に戻った。


 しかし本書の「暗殺者編」を見てしまった店員さんは、こんな一言をこぼしてしまう。


「どこの中二病だよ!」


 …………


 いいじゃん!


 どこにでもいる思春期の学生なんだから!

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