第174話ウワサのアプリであなたがカワイイ女の子になった結果――

 学校で流行っているアプリを使ってみた。


 スマホで画像を取り込むと、対象人物の性別を逆転させることができるらしい。

 

 さっそくわたしはあなたで試す。

 

 …………。


 わお、めちゃカワイくなってるじゃん。


 画面越しにヨダレを垂らしながら、わたしは視線を向ける。


「……なに見てんだよ」


 そう言いながら目を逸らすあなたに、思わずドキっとする。


 スマホを翳していないのに、あなたは女の子のままだ。


 何度も画面と実物の間で視線を往復させる。


 どうやらあなたは自分の姿に気付いていないみたい。


 わたしは鼻血とヨダレを抑えるのに必死になっていた。


「どうした? なんか顔がヤバいぞ?」


 イケボでそんなこと言われたら余計興奮する!


 わたしは手で鼻を押さえながら「だ、大丈夫だから……」と顔を上げた。


 ……やっぱり女の子のあなたがいる。


 ぐはぁ!


 ゴチソウサマというセリフを残し、そこでわたしの記憶は途切れた――。

 

 それから数時間後。


 わたしは保健室で目を覚ました。


 傍らにはあなたがいて「大丈夫か?」と心配そうに声をかけてくれた。


 そのときにはもう女の子の姿ではなくなっていて、アプリの効果は消えたらしい。


 ……少し惜しい気持ちになりながらベッドから起きる。


 わたしは姿見でシワになった制服を整えた。


「…………!?」


 鏡を覗いて固まった。


 そこに映っているのはイケメン。


 といってもあなたではない。


 顔を触って確認する。


 それは紛れもなくわたしだった。


「そういえばこのアプリ面白いぞ」


 スマホを翳すあなた。


 それはわたしが使っていた例のアプリ。


 どうやら気絶してる間に、わたしの顔を撮影したらしい。


「ぐふぁっ!」


 ――鼻血を出しながら、わたしはまた、気絶する。

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