第168話茶柱の神に呪われたわたしは、あなたと二人で茶柱の祠を訪ねる

 茶柱が立つといいことがあるらしい。


 いいことは好きだ。


 だからわたしはお茶を淹れる。


 茶柱を立たせて、いいことを起こそう!


 だけどそう単純に茶柱が立つハズもなく、わたしはズルをして大量の茶柱を湯飲みに投入した。


 その瞬間、部屋の中に暗雲が立ち込めて、白いヒゲのおじいさんが現れる。


 わたしは不思議な力により、一生茶柱を立てることのできない呪いをかけられた。


 そしておじいさんは消え、わたしは不幸体質になった。


 どうなってるの!?


 ツイてないのはイヤなので、わたしは代々お茶家業を営むあなたの家を訪ねる。


 この体質を治す方法を知っているかもしれない。


 事情を知ったあなたはこう言った。


「それは茶柱の神だ」


 と。


 元は人間だったらしく、神様は恋人の前で茶柱を立てたお茶を振る舞ったそうな。


 しかし意図的に立てたことがバレてフラれてしまう。


 その後、後悔の念に苛まれて死後は呪いの神となった。


 今も茶柱の不正を働くものに、天罰を与えているらしい。


 ――という言い伝えがあるようなのだが、茶柱の不正ってなんだよ……。

 

 そしてあなたは、わたしを連れて茶柱の祠という謎の場所にやってきた。


 再度現れた神様は最後のチャンスをくれる。


 お茶を淹れて茶柱が立ったら呪いを解くらしい。


 体質的に無理ゲーなのに、あなたは「僕を信じろ!」とヤカンのように熱い心で急須を差し出す。


 中にはあなたのオリジナルブレンド茶葉が入っていた。


 …………


 わたしはお茶を淹れる――。


 すると。


 茶柱が立った。


 それを見た神様は信じられないといった様子で目を見開く。


 そして空から降り注ぐ光に包まれ、ふわぁっと成仏していった。


 その光景を眺めながらあなたは言う。


「これで先祖の想いは果たした」と。


 なんとあなたは神様の元カノの子孫だと言うのだ。


 ……え?


 ここで明かされる複雑な家系図。


 ちょっと待って、もう一回頭を整理させてほしい。


 そんなことを言ってわたしは。


 とりあえずお茶を一杯啜る。

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