第167話虹色思考の君は、雨空の下で服を脱ぐ

 今日も天気は雨。


 どんよりとした雨雲は空を灰色に覆う。


 辺りは水溜まりだらけで部屋の中も湿っぽい。


 外に出掛けるのもうんざりだ。


 だけど一生こもっているわけにもいかない。


 おつかいを頼まれた僕は傘を持って商店街へと出掛けた。


 ため息混じりにひとけのない道中をとぼとぼと歩いて行く。


 ふと、公園の側を通ったときに人影が目に入った。


 こんな日に子供たちはいないはずだが、よく見ると高校生くらいの女の子がいる。


 傘も差さずに滑り台の上でなにかやっているようだ。


 近くに寄って目を凝らしてみる。


 そして一瞬、自分の目を疑った。


 同じクラスの君が、水着を着て楽しそうにはしゃいでいたからだ。


「な……なにやってんの?」


 鯉みたいに口をぱくぱくさせていると、君は僕に向かって首を傾げる。


「水着になってるにきまってるじゃん」だって。


 きまってるわけねーだろ!


 さも当たり前のような態度で、君はウォータースライダーのごとく滑り台を下りてきた。


 どう? あなたもやらない?


 って腕を引っ張ってくるけどできるわけない。


 どうやら雨の日を屋外で楽しむ方法を編み出した結果、水着に辿り着いたようだ。


 ……天才かよ(白目)。


「どうせ濡れるんだし」みたいな顔で誘ってくるけど、そうこうしているうちに雲間から光が覗いてきた。


 マズイ。


 このままだと人が来て変態扱いされてしまう!


 咄嗟に君の手を取った僕は、無意識に学校のプールに向かっていた。


 今日は休みだから誰もいない。


 ひとまず逃げ込むことに成功したが、慌てて走ったせいでずぶ濡れだ。


 途方に暮れていると、君がプールに入って手招きしている。

 

「せっかくだから」みたいな顔をしてるけど、とにかく君はどこでも楽しそうだな。

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