第166話今日のラッキーアイテムと、魔女が渡した契約書
クラスで占いが流行りはじめた。
けれどわたしはどこか冷めた目。
所詮はお遊びみたいなものだと思っていたからだ。
朝食のパンをかじりながら今日もテレビのニュースを聞き流す。
番組の終わりには一日の運勢を示す星座占いのランキングが表示された。
ちなみにわたしのラッキーアイテムは「パン」。
朝食を食べ終えると、いつもと変わらぬ様子で学校へ向かった。
そしたら道中で犬に追っかけられた。
どうも朝食のパンの香りが原因らしい。
何がラッキーアイテムだ。
いつもは通らない道を迂回して逃げ回った挙句、なんとか犬を撒くことに成功した。
――学校に着くとみんなが騒いでいる。
どうも通学路で大規模な事故があったらしい。
奇跡的に怪我人はいなかったようだが、いつもの通学路を通っていたら今ごろわたしはどうなっていたことか……。
その日以来、ラッキーアイテムを身に付けていると、いいことが起きるようになった。
大富豪のサイフを拾ってお礼をもらったり、人気スイーツ店で限定品がすんなり買えたりした。
調子にのったわたしは、以前より好きだったあなたに告白を試みる。
ラッキーアイテムは鋭いハサミ。
鞄にそれを仕舞って告白したのだが、見事にフラれてしまった。
あなたは気になっている女性がいるらしく、その人のもとへと行く。
…………
わたしは諦めきれず、ひっそりとあとをつけてみた。
そこにはきれいな女性と会話するあなたがいた。
女性は「婚姻届け」らしき書類を持っている。
それを見た瞬間。
わたしの頭は真っ白になって、無意識に鞄からハサミを取り出していた。
そして女性に詰め寄り、おもいっきり斬り刻んでやった――
――ただし。
女性を斬り刻んだわけではない。
刻んだのは例の「婚姻届け」だ。
のちにわかったことだけど、この女性は結婚詐欺の容疑者だったらしい。
この女性は逮捕され、さらにだまされる寸前のあなたを助けたということで、わたしは警察からもあなたからも感謝される。
そしてこの日以降、あなたと会話する機会が増えて、二人の距離は一気に縮まった。
う~ん。
なんというか。
ホント、占いってスゴイね。
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