第164話レイニーシーズン♪ ラブリーガール
梅雨の季節も本格的に始まり、わたしは家の中で過ごす時間が増えた。
普段と変わったことといえば部屋の湿気と傘を差す頻度。
学校が終わればそのまま帰って家でスマホを弄る日常は変わらない。
そんなある日の朝。
テレビから流れる天気予報の映像に違和感を覚える。
雨を知らせる傘のマークが桃色に変化していたからだ。
制作側のミスだろうか?
あるいは眼科へ直行すべきか?
とりあえず傘を持って玄関を出る。
すると信号機の辺りであなたと出くわした。
「おーい!」
と手を振ってくるあなたに、こちらも気軽に挨拶を返す。
――と、その瞬間。
車が通り過ぎて水溜まりを撒き散らせていった。
わたしの制服はビショビショ。
あなたは「大丈夫?」と心配そうに駆け寄ってきた。
「まだ時間がある。よかったらウチで乾かせていけよ」
そう言ってあなたはわたしの手を取る。
家が近いからタオルでも貸してくれるのだろう。
このまま授業を受けるのもなんだし、わたしはお言葉に甘えさせてもらうことにした。
それからあなたの家でシャワーを借り、あなたのシャツを借りて待たせてもらう。
ちょっと大きめのサイズ。
袖に鼻を当てると柔軟剤のいい香りがした。
その姿を見られて慌てるわたし……。
そうしていると洗濯&乾燥が終わる。
「さ、できたよ」と言うあなたの制服を、わたしは摘む。
「外は雨だし……もう少しここで」と拒んでみた。
――――
――そんな妄想がピークに達したとき。
目の前を車が通り過ぎ、水溜まりを頭から被った。
……ああ、わたしったらなに考えてんだろ。
さっきまでの妄想みたいにあなたが駆け寄ってくることもなく、ただ冷たい。
眼科……いや、脳神経外科で妄想癖って診てもらえるのかなぁ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます