第158話今日の味は? バリエーション豊富な彼女のメニュー表

 わたしは公園でデートをしている。


 あなたは近くのお店にたこ焼きを買いに行った。


 けっこう評判のいいお店で、デートをするときはこれ目当てで公園に来ることもある。


 少し待っていたらあなたが帰ってきた。


 しかし、その手に持ったたこ焼きを見て、わたしは言葉を失った。


 マヨネーズ。


 ソースの上にマヨネーズがかかっている。


 わたしが注文したのはチーズ味だった。


 あなたは間違えて注文してしまったのだろう。


 ああ、どうして……。


 でもベンチに座って笑顔でたこ焼きを差し出してくるあなたの顔を見てると、正直なことが言えなかった。


 そうね、せっかく買ってきてくれたわけだし。


 ここは黙って食べるべきよね。


 実際食べてみるとマヨネーズ味は絶品だった。


 さすがは人気店。


 メニューのバリエーションも豊富なこの店は、マヨネーズ以外の味もかなり評判がいい。


 うん、この味に免じてチーズのことは黙っておこう。


 そんなとき、「お待たせ!」と言って別の男性がやってきた。


 手には「チーズ味」のたこ焼きを持っている。


 男性はあなたの方を見て困ったように口を開いた。


「えと……この人は?」


 ……しまった。


 わたしは間違えた。


 この味目当てでデートによく来るのはもちろんだけど、同じ日にデートしている「彼氏たち」を把握していなかった。


 まずい……。


 あなたたちの目が、「この人、何股してるんだろう……」みたいな不安なものに変わってきている。


 そんなの言えないって。


 とりあえずたこ焼きくらいのバリエーションはあるよ。


 な~んて冗談言ったら頭からソースかけられるだろうな……。


 ハァ……。


 とにかく気まずい空気の中、尋問の視線が向けられる。


 わかりました。


 言われたことには答えるので。


 そのかわり。


 ぜひ、そのチーズ味を一口だけわたしにください……っ!

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