第153話なんとかを覗くとき、なんとかもまたなんとかで――

 君を覗くとき、君もまたこちらを覗いている。


 これは学校でのワンシーンだ。


 僕が君を見ると、きまって目が合う。


 これは別に好きだから見ているわけじゃあない。


 背筋に感じるゾクゾクとした視線に反応して、つい君のほうを見てしまうんだ。


 ほら、今だってゾクゾクして――


 ……やっぱり目が合う。


 授業中だろうが休み時間だろうが、君は長く垂れた前髪の間から、黒い瞳をこちらに向けてくるんだ。


 何かイヤな予感がした僕は、ある日を境に距離を置くことにする。


 学校が終わると同時に鞄を持ってすぐ帰宅。


 すると、さっきまで晴れていた空が西の方から徐々に暗くなっていった。


 背筋を撫でる悪寒を察し、僕は振り返る。


 そこにはやはり、君が立っていた。


 幽霊みたいにすーっと寄ってきて、ニヤァっとこちらに笑みを向ける。


「あなた、光属性ね?」


 ――唐突に告げられたその言葉に、僕は心臓が飛び出るかと思った。


 イヤな予感は的中した。

 

 そうだ。


 僕は『光属性の人間』なんだ。


 だから外に出れば天気は晴れるし、人を惹きつけやすい特性がある。


 それを言い当てたということは……ひょっとして君は『闇属性』だね?


 つまり、それは僕と天敵の関係にあたる。


 こうなったら仕方ない。


 今すぐここで君を始末するしか――


 ――……


 そんなことを思っていると、君は薄く笑って僕の手を握った。


「わたしと友達になってほしい」


 唐突にそんなことを言う。


 え?


 ……しばらく意味がわからなかった。


「光が強いぶん闇が濃くなり、その逆もまた然り。二つは古来より切り離せない関係にある。だからわたしたちうまくいくと思うの」


 思ったより大きな瞳を潤ませながら、そんなことを言ってくる。


 降りだした雨の中、君が握る手は小さく震えていた。


 温度が伝わり、僕の心臓がドキドキと脈を打つ。


 なんだろう、その黒い瞳から目が離せない……。


 さっきまでの晴天が嘘のように雲に覆われて、けれど優しい雨が僕たちを濡らす。 


 それがなんか。


 あたたかく、心地いい――

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