第137話君は雨の日に傘を奪う。晴れの日に靴を隠す。

 僕はどっと疲れてベッドに伏していた。


 雨が降る休日の午後。


 無気力に天井を眺めながらため息が出る。


 理由は昨日の出来事を思い出していたからだ。


 僕は思う。


 君と一回話をさせてほしい――。


 振り返れば君との出会いは最悪だった。


 土砂降りの放課後、君は僕の傘を奪って何食わぬ顔で下校した。


 一瞬、僕が君の傘と間違ったのかと思ったけどそうじゃない。


 間違いなく僕の傘を差してきみは帰宅する。


 嫌がらせだろうか?


 次の日も君の奇妙な行動は続いた。


 今日はどういうわけか靴を隠された。


 ちなみに外は晴れ。


 どうしようか困っているところに助けが来る。


 別の女の子が靴を見つけてくれて、この日は事なきを得たのだ。


 助かったからよかったものの、しかし君の目的がわからない。


 それから雨の日も晴れの日も、僕への嫌がらせは続く。


 そして昨日、いんかげん頭にきた僕は感情に任せて君に怒声を浴びせた。


 君は「ごめんなさい」と謝ると、寂しそうに踵を返して下校する。


 それから入れ違いでやってきたのは、いつか僕の靴を見つけてくれた女の子だ。


 なぜか頭を下げるこの子は、君についての全てを話してくれた。


 君の親友であるこの子は、僕に好意を寄せていたという。


 しかし話すきっかけが作れずに悩んでいたところ、君が強引な方法で僕を足止めしたのだとか。


 つまり下駄箱で時間を稼ぎ、この子が会話するチャンスを作り出していたのだ。


 あまりにも不器用すぎる方法だ。


 怒声を上げる僕を見て罪悪感を懐いたこの子は、頭を下げて走り去ってしまった。


 ――それが昨日の出来事。


 まさかそんなことになっていたなんて……。

 

 とにかく改めて二人と話し合おう。

 

 それに怒声を上げたことも謝りたいし……。


 君たちの顔が頭の中をグルグル回る。


 ……なんか疲れてきた。


 いろいろ考えていると、いつの間にか僕は眠りに落ちる――。

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