第135話徹夜でゲーム実況した翌日は、授業中に君が飛空艇で攫われる

 ある日突然君が攫われた。


 退屈な午後の授業中のことだ。


 昨夜は徹夜でゲーム実況したから眠い。


 そんなときだ。


 窓の外から巨大な飛空艇がやってきて乗組員らしき人物が君の身体を抱えていった。


 教卓の先生も周りの生徒もポカンと口を開けて、遠ざかる飛空艇を見つめる。

 

 これは夢か?


 RPGでよくみる飛空艇のフォルムにそっくりだけど……いてて。


 頬を摘まんだけど痛い。


 ということは、これは現実か。


 なんかよくわからないまま授業は終わり、あっという間に放課後を迎える。


 君が攫われただけでも事件なのに、このあと僕はもっとわけのわからない出来事に巻き込まれることになる。


 放課後。


「ただいまー」と玄関を開けて帰宅した僕の目の前に待っていたのは、ドレスをまとった君だった。


 しばらく眉間を揉んで瞬きをしたあと、改めて姿を確認したけどやっぱり君だった。


 なんで他人のウチにいるんだよ。


 そしてどっから入った?


 そう質問した僕に対し、「あなたの部屋の窓から入りました」とお姫様みたいに丁寧な口調で返答してくる。


 見た目は丁寧なんだけどやってること犯罪だからね?


 案の定、二階の自室に上がると丁寧に窓ガラスがくり抜かれていた。

 

 おいこら。


 いろいろ理解が追いつかない僕の手を握り、君は空中に待機する飛空艇へ乗るように呼び掛ける。


「わたしの正体は空賊のお姫様なの。異世界から招集が掛かったからわたしと一緒に来て!」


 ……とんでもないことを言ってきた。


 なんだって?


 空賊の?


 僕がラノベの主人公だったら、このまま飛空艇に乗り込んでたかもしれない。


 だけど今夜もゲームの実況があるんだ。


 悪いけど本番にそなえて今から爆睡させてもらう。


 おやすみなさい。


 ――そう言って僕はベッドに横になる。


 すると君はポカンと口を開けていた。


 が、そこは空賊のお姫様。


 間髪入れず僕の身体ごと飛空艇に運んでしまう首尾の良さだ。


 ……身体ごと盗むとか。


 ……いや、だからさ。


 それ、犯罪だからね?

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