第132話四季の舞いを披露する巫女は間違ってUFOを召喚する

 わたしの住む地方には独特なお祭りがある。


 それは四季の神様に感謝の舞いを披露するというものだ。


 昔からの伝統行事で、毎年16歳を迎えた少女が儀式を務めることになっている。


 今年は巫女服に着替えたわたしが神社の境内に立つ予定だ。


 ……はずかしい。


 当日、手に持った神器で鈴の音を散らしながら舞いを披露する。


 照れ隠しのせいでぎこちない動きになるわたし。


 この不思議な挙動のせいか、どうやら謎の力を発してしまったようで……。


 どういうわけか空からUFOが降りてきた。


 唖然とする観客の中、本殿の石畳を照らす円柱の光。


 そこから現れたのは一人の男の子だった。


 地球の言葉が喋れるあなたは、宇宙の交信と勘違いして降りてきてしまったという。


 なぜかわたしの顔をじっと見ていたので、なにげなく目を逸らしてみる。


 せっかく地球に来たということで、あなたはしばらくこの地に住むということになった。


 そう。


 ここからわたしたちの交流がはじまった。


 学校が終わると近所を散歩したり、日本の文化を教えてあげたりした。


 あなたは宇宙のことや趣味の話をしてくれる。


 互いに話しているうちに、地球も宇宙も恋愛事情はよく似ていることがわかってなんかおもしろい。


 それから一カ月後のことだ。


 この地は唐突な異常気象に見舞われた。


 止まない豪雨に川は氾濫し、あちこちで水田が水没した。


 この光景を見たあなたは、わたしを神社に連れて行って神器を持たせる。


 これは感情の昂りをエネルギーに変えて空中に散布する装置だというのだ。


 そんなの初めて知った……。

 

 と、そのとき。


 あなたは突然、わたしを抱き締めた。


 身体中の血管が熱い。


 ドクドクと、心臓の高鳴りは神器を通して空に届く。


 雨雲を散らし、ぽっかり空いた雲間からは一筋の光が降り注ぐ。


 ハッとなったわたしはあなたの腕の中で顔を上げた。


 青い空を見上げてようやく状況を認識する。


 胸の鼓動と伝わる体温。


 あなたはにっこりと笑っている。


 目が合って、わたしは顔を伏せて心で叫んだ。


 ……はずかしい!

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