第129話図書館探偵は紫煙の真相をサッカー部のマネージャーに語る

 僕は図書館探偵だ。


 本から得た知識で事件を解決したことから、みんながそう呼んでいる。


 放課後、静かに本を読んでいるところに誰かがやってくる。


 サッカー部のマネージャーを務める君だ。


 とある事件を解決してほしいという。

 

 つまり依頼だ。


 僕は読んでいた「裁縫のすべて」という本を閉じて話に耳を傾けた。


 事件が起きたのは昨日、雨の降る放課後。


 音楽室から小火が出た。


 幸い早期発見のおかげで火は消し止められる。


 現場にはタバコの吸い殻。


 誰かがここで喫煙していたと思われる。


 学校側は大事おおごとにしたくなかったようで、警察には届け出なかったようだ。


 ところが今日、今度はサッカー部の部室から火が出たらしい。


 怪我人こそ出なかったものの、下手したら大惨事だ。

 

 君は昨日の件と今日の件は、同一犯によるものと推測している。


 燃えた部屋からはタバコのニオイがしていたらしく、おそらくその線は濃厚だろう。


 とりあえず僕は現場を見るためにグラウンドに向かった。


 そこではサッカー部の練習風景が目に入る。


 なにやらゴールキーパーがお腹を摩っているのが気になったが、君いわく弁当の食べすぎと言っていたらしい。


 それを聞いて僕は「なるほどね」と呟く。


「あのキーパーが犯人だよ」


 ――事件の真相はこうだ。


 昨日、雨が降って練習が中止になったので、キーパーは音楽室で隠れて喫煙したところ小火を起こす。


 今日になって、それでもキーパーは部室で喫煙するが、うっかり火を練習用のゼッケンに落としたのだ。


 着替える時間がなかったから手で隠しているみたいだけど、いずれバレるだろう。


 間違いなくお腹の辺りが焦げているから。


 そのときはこの本を勧めてほしい。

 

 自分で開けた穴は繕うべきだ。


 僕は君に「裁縫のすべて」を渡す。

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